
沖縄戦を経験した語り部が高齢化のために少なくなる中、朗読を通して沖縄戦の記憶を伝える活動をしようと、2015年から実施している平和朗読会。戦争体験者の手記を中心とし、絵本や紙芝居、エッセイなども朗読します。
各地の資料館や学校などに協力いただきながら、毎年、沖縄戦における組織的戦闘が終結したとされる6月23日の慰霊の日前後に実施しています。



糸満市と県平和祈念資料館に協力を仰ぎ、資料館のホール内にて平和朗読会を実施。
元ひめゆり学徒など戦争体験者も多く来場しました。
朗読内容:市史に掲載された戦争体験者の「手記」を朗読
2015年担当アナ:土方浄、狩俣倫太郎、片野達朗、與那嶺啓
・糸満市における沖縄戦の体験記集より
「激戦の南部で」屋良朝清さん
「忘れまい、あのイクサユー(戦世)」玉城弘さん ほか
2016年担当アナ:土方浄、狩俣倫太郎、與那嶺啓、仲田紀久子 ほか
・糸満市史資料編7 戦時資料下巻戦災記録・体験談より
「12月26日までガマに」西門篤一さん
「戦禍を超えて」平良栄子さん
「宮崎県都農町に疎開して」島袋雄介さん ほか


『火垂るの墓』などで知られる野坂昭如さんの『戦争童話集 沖縄篇 ウミガメと少年』の原画を展示する企画展とコラボレーションして朗読会を実施しました。
朗読内容:『戦争童話集 沖縄篇 ウミガメと少年』 作 野坂昭如 絵 黒田征太郎 発行 講談社
担当アナ:狩俣倫太郎、仲村美涼 ほか
来場者数は約100人。子どもから高齢者まで幅広い年齢層が参加。料金は無料、入館料別。
・朗読練習時や当日の会場の音声のほか『ウミガメと少年』の絵を手掛けた、画家・黒田征太郎さんのインタビューを交えてラジオ番組(1時間)を制作し、放送しました。
・参加者からは「この空間で実際に絵を見て朗読を聞くことに意義があったと思う」などの意見もあがりました。


戦時中、多くの生徒が学徒兵として戦場に動員された県立第一中学校、現県立首里高校で朗読会を開き、元学徒兵の手記を首里高生たちに朗読しました。
朗読内容:県立第一中学校生徒の戦闘体験を収めた『若き血潮で空を染めける~一中生徒の戦記~』から、当時14歳の宮平盛彦さんなどの手記を朗読。
担当アナ:狩俣倫太郎 ほか
・首里高校の体育館で、新一年生(440人)が参加する首里高校慰霊祭の事前学習の中で実施しました。
・宮平さんを取材し、朗読会の音声を交えて1時間のラジオ特番を放送。ラジオ番組「消せない記憶~元学徒兵の苦悩~」は、日本民間放送連盟賞ラジオ報道部門最優秀賞などを受賞しました。


2018年12月にリニューアルオープンした、県立図書館とのコラボレーションで実施しました。幅広い世代に参加してほしいとの思いから題材を児童文学とし、柔らかな語り口で届けました。
朗読内容:『 な・ま・え 』 こんひでこ著 発行 アトリエDeko
『 オジィの海 』 尚子著 発行 文芸社
小学校高学年からの参加を対象とし、県立図書館に収蔵されている児童文学から二作品を朗読しました。
担当アナ:仲田紀久子、嘉大雅
・40人ほどの来場があり、中には親子連れの姿もありました。題材に取り上げた本や関連書籍を手に取る来場者もいました。
コロナ下のため、ラジオ放送のみで実施しました。県内新聞社沖縄タイムス社の連載企画とコラボし、タイムス社のWEBページに朗読の音声を掲載しました。
朗読内容:沖縄タイムス社「戦世生きてくらしの記憶」
一般住民の視線から戦前・戦中の記憶を辿る連載企画。新聞記者が取材しまとめた5つの体験談を朗読しました。
担当アナ:仲田紀久子、仲村美涼、鎌田宏夢 ほか


元学徒と引率教員の手記、娘を亡くした父の手紙を取り入れ、多角的な視点でひめゆり学徒の記憶を伝えました。
朗読内容:『ひめゆり』文 ひめゆり平和祈念資料館 絵 三田圭介 発行 フォレスト
ひめゆり学徒の山里トヨさんを亡くした父が、娘へ宛てて書いた手紙を朗読しました。
担当アナ:狩俣倫太郎、仲田紀久子、仲村美涼、沖野綾亜
・山里トヨさんの父親の手記は展示の機会が限られていましたが、今回の朗読会では戦争を物語る一次資料として発信でき、朗読の可能性を感じたと関係者からコメントがありました
・普天間朝佳館長からは「語り部から話を聞くことが難しくなる中で、朗読も雄弁に戦争の記憶を語ることができる」とあり、私たちの活動の根幹を支える言葉となっています。

子どもたちの命が一瞬にして失われた対馬丸事件を 取り上げた紙芝居を親子へ朗読しました。
朗読内容:『2つのランドセル』『対馬丸へのいのり~宇検村対馬丸いれいのひをたずねて~』
学童疎開中だった子どもたちを含む1400人以上が犠牲になった対馬丸事件。今を生きる子どもたちにこの出来事を伝えたいと、2編の紙芝居を朗読。
担当アナ:片野達朗、沖野綾亜
会場には親子連れなど40人が来場。記念館の証言資料などを事前に観覧し、朗読会へ参加してもらいました。
・朗読の事前取材を踏まえ、1時間のラジオ番組「ものが語る悲劇、対馬丸」を放送。日本民間放送連盟賞ラジオ報道部門優秀賞を受賞しました。


画家夫妻の絵画にまつわる物語を朗読。断片的に残った二人の言葉をつなぎ、朗読劇仕立てにして届けました。
朗読内容:二人の言葉をつないで作ったシナリオ
『沖縄戦の図』を描いた画家丸木位里・俊夫妻の絵画を展示したいという佐喜眞道夫館長の思いから、普天間基地の返還地に1994年に建設された佐喜眞美術館。2人の書籍は図録などが主で、絵画の説明書きや巻末の短いあとがきのような短い文章でしか言葉を辿ることができませんでした。そこでこの朗読会では、断片的に残された二人の言葉と佐喜眞館長のエッセイを基に台本を制作し、 丸木位里さん、俊さん、佐喜眞館長役を立て、朗読劇仕立てで届けました。
『IWANAMI GRAPHICS 26 鎮魂の道 原爆・水俣・沖縄』
著者 丸木位里/丸木俊 解説 水上勉 発行 岩波書店
『ふたりの画家―丸木位里・丸木俊の世界―』
著者 本橋成一 発行 ポレポレタイムス社 発売 オフィスエム
『アートで平和をつくる 沖縄・佐喜眞美術館の軌跡』
著者 佐喜眞道夫 発行 岩波書店
『おきなわ島のこえ』
文・絵 丸木俊 丸木位里 発行 小峰書店
(※書籍内文章の改変は行っていません)
担当アナ:仲村美涼、嘉大雅、鎌田宏夢
・会場には100人以上が来場。当日は、ピアニストの辺士名直子さん、バリトン歌手の仲本博隆さんに楽曲を披露いただきました。


小説とエッセイを組み合わせた朗読会で、記憶をつなごうと尽力する作者の思いを届けました。
朗読内容:『遠い約束』『慰霊巡拝の旅路』室積光著
俳優・福田勝洋の名でも知られる作家・室積光さんが執筆した『遠い約束』の一部を朗読しました。各地で1000回以上公演を行った朗読劇を小説化したものです。また、自身の父から戦争体験を十分に聞けなかった後悔から。パプアニューギニアに動員された父の断片的な話を紡ぎ、自身が慰霊の旅をしたエッセイ『慰霊巡拝の旅路』も併せて朗読しました。
担当アナ:片野達朗、仲村美涼 ほか
朗読会では室積さんのトークセッションも行い、来場者50人へ向けて、執筆にかける思いや、沖縄とのつながり(父が海外で助けてもらった兵士が沖縄本島南部の糸満市出身かもしれない) をお話しいただきました。


TBS記者が制作した絵本とコラボして朗読会を実施。元ひめゆり学徒の手記も併せて朗読し、国内外のできごとから戦争の悲惨さを学びました。
朗読内容:絵本『少女兵士ピチャ』と元ひめゆり学徒の手記
TBS加古紗都子記者が手がけた、アフリカの内戦で兵士となった少女の実話をもとにした絵本。
元ひめゆり学徒の北城良子さんが書いた手記『6月が来るたびに』も併せて朗読しました。
担当アナ:仲田紀久子、仲村美涼
ひめゆり平和祈念資料館のホールを会場に40人ほどが参加。日々の生活や戦争の影が残る現地の様子、またウガンダの布を使ったワークショップも実施し、子どもも参加しやすい雰囲気を作りました。当時加古記者が取材していた、元護郷隊員の宮城清助さんも会場を訪れ朗読会に参加してくださいました。


『艦砲ぬ喰ぇー残さー』の歌に込められた思いをでいご娘から学び、地元の高校生が唄三線と朗読で地域の人へ届けました
朗読内容:『作詞作曲した比嘉恒敏さんと、4姉妹でいご娘のお話』
・読谷村出身の比嘉恒敏さんが作詞作曲した『艦砲ぬ喰ぇー残さー』に込められた思いをRBCが取材し原稿化したものを、地元の読谷高校生2人が朗読しました。
・慰霊の日に楚辺地区で開かれたコンサートにて朗読。当日はでいご娘と読谷高校生による唄三線も併せて披露されました。
・この日に向けて、読谷高校生たちはでいご娘から歌詞の意味を学ぶ勉強会を実施。恒敏さんやでいご娘の思いに触れ、内容を深く理解していました。
担当アナ:仲村美涼 嘉大雅
・RBCアナウンサーによる朗読レッスンを3回行い、発表へ向けて準備を重ねました。地域の人と作る、地域の戦争の歴史をつなぐための朗読会の可能性を感じました。


開館したばかりの博物館とコラボ。米軍上陸地点のひとつ、北谷町(旧北谷村)に関わる人たちの戦争体験集を朗読しました。
朗読内容:町史『 北谷町民の戦時体験記録集』
・2024年に開館した北谷町立博物館にて朗読会を開催しました。1985年に出版された戦争体験の手記を綴った本の中から 三編を朗読しました。北部疎開の記憶を綴る手記が多く、中部地域の戦争体験について理解を深める機会になりました。
・当日はピアニストの辺士名直子さん、沖縄伝統組踊 子(しー)の会会長の大城建大郎さんによるピアノと三線の演奏、歌が披露されました。
担当アナ:狩俣倫太郎、仲村美涼、鎌田宏夢
・戦後80年の今年は、平和朗読会に初回から関わる狩俣アナも加わり活動にかける思いを語る場面もありました。140人の来場者とともに、平和の願いを新たにする一日になりました。


八重山出身のひめゆり学徒たちの手記を、八重山地域の人たちと共に声で紡ぐ朗読会を開催しました。
朗読内容『八重山出身の元ひめゆり学徒らの手記』
・ひめゆり八重山平和祈念館の戦後80年移動展『ひめゆりと八重山』内のイベントとして実施。8月23日に事前ワークショップを八重山平和祈念館で、24日に朗読会を石垣市役所1階にて実施しました。
・ワークショップには事前に参加を募った24人が参加。
ひめゆり平和祈念資料館の前泊克美学芸員と元学徒の川平カツさんの長女、慶田盛みき子さんが登壇し、ひめゆりの歴史や学徒の生活について学ぶトークセッションを実施しました。その内容を踏まえて朗読台本を読み込むグループワーク、参加者の前で発表するリハーサル等を3時間かけて実施しました。
・朗読会にはワークショップに出席した人の中から、中学生や高校生、現役の教員など8人が参加。そこにアナウンサーを加えた10人で、戦前・戦中・戦後のひめゆり学徒たちの足跡を辿る朗読を約1時間行いました。80人を超える来場者が、静かに耳を傾けていました。
担当アナ:與那嶺啓、仲村美涼
参加者からは「資料や証言を見聞きしてきたが、自分が朗読で伝える側になったとき、より深く当時の状況や思いを感じることができた」「戦争体験は辛く、目を背けがちだが、朗読を通して体験者の気持ちを理解できた」などの反応が多く、今回の手法が記憶継承において有効な手段ではないかと改めて期待することができました。